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詩の中のパウリスタ

詩 銀座の思い出(一部略)

フランス象徴派の詩人たちが
アブサントをあおって
巴里の巷に酔うように
帝政ロシアのニヒリストたちが
モスコーの夜の並木路で
ウオトカで恋をするように
世紀末の日本の詩徒は
ヴェルレーヌやマラメルや
ボードレールのあとをつけて
銀座のショーウインドーで
ペルシャ絨氈の朱 はだか柳にはえる
あの束の間を享受した
洋書の金文字や台湾喫茶のウーロン茶に
手をさしのべた
ガス燈の青白い光の波の片隅で
モンナヴァンナの作者をしのんだ
プランタンで永井荷風がなぐられた
夜店のカンテラに久保田万太郎の横顔がちらっと赤らんだ
一杯五銭のブラジルコーヒーパウリスタ
やがてライオンも
カフェ・ギンザになるといううわさだ

(作者)

平野威馬雄(ひらの いまを) 明治33年東京生れ。
詩人。仏文学者。十八歳でモーパッサンの翻訳をする。「お化け」の研究家。混血児救済の「レミの会」会長。

(解説)

この詩は、大正六年の銀座の情景を描写しています。詩の中にある柳と瓦斬燈と夜店のそぞろ歩きが「銀ブラ」の楽しみでした。モガもモボも「パウリスタ」まで歩き、一日四〇〇〇杯もコーヒーが出ました。

(参考)

平野威馬雄 『銀座ものがたり』
ブラジルコーヒーのストレートを一杯五銭でたっぷり飲ませた。ぽってりした分厚な白陶のカップに「星」と「女神」の正面顔がマークとしてついていた。あのマークは今も眼底にこびりついていてなつかしい。
パウリスタではコーヒーのほか、一皿十五銭のカレーライスがうまかった。ボーイが景気のいい声で「カレーライス・ワン」と英語で承るのがやたらに西洋くさく、うれしかったものだ。

投稿者 有機コーヒー通販・無農薬コーヒー通販の『森のコーヒー』公式サイト :2007年12月20日

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